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- 後遺障害14級の神経症状に対して労働能力喪失期間として15年が認められた
和解金額 2750万円 後遺障害14級の神経症状に対して労働能力喪失期間として15年が認められた
論点
- 後遺障害14級9号の労働能力喪失期間
- 休業損害の基礎収入
事案の概要
事案は、加害車両がセンターラインオーバーで依頼者の運転していた被害車両に正面衝突し、被害者(50代・男性・自営業・既往症なし)が右膝後十字靱帯損傷等の傷害を負って、入院半年、通院1年以上という治療を余儀なくされた事案です。
自賠責保険が後遺障害として14級9号(局部に神経症状を残すもの)を認定しました。しかし示談段階では相手方保険会社から既払金を除いて500万円程度の呈示しかなかったため、福岡地方裁判所に訴訟を起こすことになったものです。
ポイント
後遺障害14級についての最近の裁判例は、労働能力喪失期間を制限する傾向にあります。保険実務でも3年から5年程度とする傾向があります。確かにデスクワーク中心の会社員であり、かつ、後遺障害が外傷性頚部症候群(むち打ち)等の場合には後遺障害14級が認定されても現実の実収入には減少がなく、労働能力喪失期間としては5年程度が妥当なケースも多いでしょう。
損害賠償額算定基準(いわゆる赤本)においても、「むち打ち症の場合は、12級で10年程度、14級で5年程度に制限する例が多くみられる」としています。一方、赤本は、「後遺障害の具体的症状に応じて適宜判断すべきである」とも指摘しているところです。
この点、依頼者の職業は実際に海に出て操業する漁師でした。そのため膝後十字靱帯損傷による痺れ、疼痛、膝のがたつき等は漁業という職業に多大な影響を与えていました。依頼者・家族としても今後の仕事を継続できるのか、具体的な不安を抱えており、労働能力喪失期間5年では到底受け入れることができなかったのです。
そこで訴訟では、漁師としての具体的な作業内容について客観的な資料で立証し裁判官に理解してもらうことにポイントを置くことにしました。
まず漁協から具体的な漁に関する資料を取り寄せて、依頼者が行う漁の内容、作業内容・作業量を明らかにしました。その上で、依頼者が実際に海で漁をする写真を提出しました。
また主治医からヒアリングを行って、依頼者の膝の現在の状況、今後の見込み、疼痛増悪の可能性、就業への影響などについて意見書を作成・提出しました。
その上で、依頼者から日々の漁の様子についてかなり詳細に聞き取った陳述書を作成・提出しました。
その結果、裁判所の和解案としては、労働能力喪失期間として15年が呈示されるほか、争いのあった休業損害の基礎収入についても原告の言い分がほとんど採用され、既払金を除いて2750万円で和解が成立したものです。
雑感
提訴から半年で早期和解が成立しました。
準備書面段階から立証のポイントを明確に意識して、細やかな損害立証を心掛けました。その結果、裁判官も早期に心証を取り、証拠調(尋問)前に和解案が提示されました。
3000万円の訴額の訴訟を起こして2750万円にて和解成立し、依頼者の希望額を大きく超える和解額だったため、依頼者及びご家族には大変喜んで頂きました。今も時々、お電話があり、相談を受けることもあるなどお付き合いが続いています。
「どうしても納得できない」という被害者の強い思いを正面から受け止めて、満足のいく訴訟上の和解が成立した事案。私にとっても記憶に残る1事件になっています。